最新改定 2003-Dec.-02
PRC-10半導体化IFモジュールの解明
 JA1ENC局とJH3FJA局がそう違わない時期にヤフーオークションで落札した1山幾らのCAN型モジュールの中にそれぞれ混じっていたJAM-427-B/Uなる名称のIFアンプ(試料1、試料2と呼称)は、JA1ENC局の「何かありそう」との感による解剖によりトランジスタ化された半導体化IFモジュールである事が判明しました。 ここでは解明の詳細と性能計測結果等を(出来るだけ)逐次でレポートしております。
内部の様子     回路の解明     消費電流     電圧ゲイン     開発背景     旭電機工業

内部の様子
 これらはJA1ENC局が「試料1」を開缶し内部調査されたものです。
左写真の基板裏側
内部回路の解明
 半導体化IFモジュールの回路の解明は、JA1ENC局が試料1に対して、また、JA3ANF局が試料2に対し実施され、以下の回路であることが判明し ました。
従前の真空管によるモジュールの回路図 (単独ウインドウが出ます適当に配置ください)と比較すると、(1)入力段がM結合になっていること (2)フィラメント 回路が浮いていること (3)出力段のQダンプがないこと などが見えてきます。

(1)入力段のM結合化は2つの必要性からと推測できます。1つはインピーダンスの整合です。5678のグリッド入力インピーダンスに比べ ベース入力のそれは うんと低いですから整合が必要です。もう1つはスケルチのためのマイナス符号が付いたDC電圧、周りくどい言い方ですが検波した電圧が欲しいからです。真空管の グリッドリークバイアスのあの芸当はトランジスタには出来ません。この入力周りの回路は2SC273のベースに低目のインピーダンスでIF信号を渡すのと、スケ ルチ用の検波への2分岐路になっていると見ると分かり易いかも知れません。

(2)フィラメント回路が非接続なのは、不要だからと考えるのが素直です。フィラメント電圧に増幅動作が依存しないと言うことは、A電圧の低下にゲインが落ちないことを意味します。

(3)出力段のQダンプがないのは、2つの理由が考えられます。1つは、ダンプするほどゲイン余裕が出ず帯域特性はちょっと狭いままで妥協した。2つ目は、トランジスタアンプのため出力コイルの負荷Qは低く、それなりの帯域特性になってしまった、です。

 なお、真空管5678に替わり使用されたトランジスタ2SC273の規格は以下の通りです。
Type Mfr NPN PNP Vmax Ic MaxAmp Pmax W hFE Ft MHz
2SC273 NEC n-p-n 120 0.050 0.500 50 150

( 注意 ) 糸鋸などを用いてJAM-427-B/Uの開CANをされる場合は、MTソケットのピン番号2番と4番の間、並びに6番と8番(スペース)の間を深く切りますと基板のブラケットまで切断してしまうので深切りに十分注意が必要です。

消費電流計測
 JA3ANF局が計測されたものです。1CANあたり約1mAの増加です。
試 料 消費電流(mA) 備 考
. 半導体タイプ
. 半導体タイプ
.4程度 真空管タイプ

( 注意 ) JAM-427-B/UはA電源を使用しないので、専用電源であるAM−598と組み合わせ使用する際は注意が必要です。AM−598内部の定電流制御回路が電流減少分を増加しようとして印加電圧を上げるからです。

電圧ゲイン特性計測
 JA3ANF局が計測されたものです。遜色はありません。
試 料 ゲイン(dB) 帯域(dB) 備 考
−0. おって 半導体タイプ
+−0 おって 半導体タイプ
基準値 おって 真空管タイプ
 2つの供試体はともに同調回路の離調等の不良があり再調整の後、計測されたものです。原因が経年劣化に依るものがもともとの調整不良に依るものかは不明です。

開発背景
 この半導体化IFアンプモジュールの開発背景は何だったのでしょうか。これまで各局から登場した開発理由(推測・憶測)は以下の通りです。

 a.A電池の消耗を抑えるための省電力化狙い
 b.師匠(諸外国)より先んじた何かを某A庁がやってみたかった
 c.師匠(諸外国)より先んじた何かを旭電機がやってみたかった

 更には、このモジュールは いつごろ開発されたのでしょうか。 JA3FTU局流の「2SC273登場時期より後」の線で当ってみると、昭和40年10月新版 発行のオーム社 電子工学ポケットブックに編纂のトランジスタ規格表では、最新の石が2SC262であり、当時の新しい石の発表頻度を加味すると、2SC273 は1942年頃に登場した石と思われます。

旭電機工業の消息
 旭電機工業製のPRC-10本体への興味の度合いをよそに、この半導体モジュールに接するにつれ会社自身の消息と当時の開発のいきさつを知りたいと思う のは、エンジニアのDNAでしょう。そこで調査は始まっています。もちろん某A庁の調達部門で調査すれば近道なのですが、まー趣味のこと巷の調査資源から掘り下 げましょう。

昭和25年2月に東京近郷に旭電機は存在していた。(JA2GZU調べ)
(村田製作所HPの社史に係わる記述より)

昭和53年にはSOSブイを製造していたようだ。(JA3ANF調べ)
資料番号/名称 3-60.遭難信号自動発信器 REB20型
製造元/製造年月 旭電機工業(株)/1978(昭和53)年
型式/製造番号 ES2AEB2-7A2-1/No.1066
(電通大 歴史資料館HPの記述より)

80年代に入手の2091KHzのSOSブイの製造者が旭電機工業で
アンテナはAT-271のような方式で有ったのを思い出した。
旭電機工業はNEC関連の会社に吸収され、その会社も今は無し
吸収された時期は、昭和の終わりか平成の初めだろう。
会社は東京近辺に有った。(JA3FTU)

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