● 代替メータの製作(ID-292A外置きメータ)              (最新改定 2007-Feb-11)
  小ぶりで黒色ベゼルのしっかりしたアナログメータは軍用無線機のシンボルの1つでもありますが、欠品や故障となるとズバリの仕様(電気特性・目盛表記)を持ったメータの入手は困難なことが多く、止む無くオリジナルと異なるメータが装備されている軍用無線機も見かけます。
  このページでは、安い741タイプのオペレーショナルアンプによるメータアンプと目盛板の製作による代替メータの製作例として、PRC-6用のアライメントツールID-292Aの代替メータ(内部抵抗、振れ感度ともに等しい)の製作を紹介します。

  平成19年1月、ID-292Aのジャンクを安くで入手しました。点検の結果、メータの断線だけで他は健全でした。 幸いこのメータの目盛板には195オーム、500マイクロアンペアの表記があり、この仕様でメータ単体の代替を作ることにしました。 ID-292A内部の分流抵抗器および分圧抵抗器は、当然ならがこのメータ仕様がベースにありますから、代替メータも内部抵抗値とフルスパン電流値を厳密に合わせることが必須となります。 200オーム500マイクロアンペアであれば、100マイクロアンペア1キロオームの38角メータが準規格でありますので代替メータ側の分流器だけで勝負できるのですが、195オームは中途半端な値でありメータアンプで適合させています。
これが入手したID-292Aです

 内部の様子
ケースから取り出しメータも外す 更にメータ単体を分解
  左の写真はID-292Aの内部です。 右にある4つの筒状のものは分流器・分圧器の抵抗器、背中の見えている可変抵抗はキャリブレーション設定用、左上の銀色のサブミニチュア管5678はインピーダンス変換用でPRC−6内回路のグリッドやディスクリ信号の計測においてハイインピーダンス入力としID-292Aを接続したことによる付加効果を無視出来る程に低減します。 5678の動作のためのフィラメント電圧・+B電圧はPRC-6本体から被点検信号を兼ねた形で供給されています。
 右の写真は、メータ内部までの分解の様子です。 可動コイル部が断線しており、メータケーシング内側の腐食跡からみて雰囲気による腐食断線と思われます。

■ 代替メータの製作
<メータアンプの回路>
メータアンプの回路図です
  ジャック箱に沢山在庫があることとゲインやオフセットの容易さより、741オペレーショナルアンプ(オペアン)を使った回路としました。 ID-292Aからの0〜500マイクロアンペアの電流信号を195オーム(1.8Kオームと220オームの並列)でシャントし 0〜97.5mVの電圧降下を得ます。 この電圧を非反転増幅回路で増幅しメータを振らせます。非反転増幅回路の電圧ゲインは (R3+R4)/R3 より11倍あり、0〜1.0725Vとなります。 この中途半端な電圧信号範囲に対し分圧器抵抗VR2により使用メータのフルスパン指針位置に適合させます。 オフセット調整用のVR1は、(後述の)貼り重ね目盛板のゼロ位置が印刷や貼り込みで少々ズレても電気信号的に調整出来るようにするもので、VR1とVR2で素材のメータの目盛位置とはズレたゼロ表示位置・フルスパン表示位置を任意に設定できる訳けです。
  このメータアンプの電源電圧範囲は6V〜30Vですが、LEDの安定抵抗の値は感じの良い光り具合に調整が必要と思います。
消費電流は、LED表示分を除き、0.8mA@6V、1.1mA@9V、1.5mA@12Vとごく僅かなものです。


<貼り重ね目盛板>
プリンタで拡大し作った目盛り板
  代替メータとして使用のメータは、アンリツの電界強度計から収穫の100マイクロアンペアの電流計を使いました。 こんなに大きなものは使用目的からは必要ではありませんが、目盛板の貼り重ね作業がやり易いのはこれ位の大きさのものです。 新目盛板はオリジナル品のメータの目盛板をイメージスキャナで撮り、これを拡大し写真用プリンタ紙に印刷したものです。 写真の上方がオリジナルメータの目盛板、右が代替メータ用の目盛板で汚れを含め全体が拡大されています。

<完成姿>
PRC-6のアライメントの為のセットアップ
  こんな感じになりました。メータの箱は合板製で、赤黒ターミナルも軍用ジャック品です。写真撮影の後に電源表示のLEDを取り付けてあります。 

以上、任意の内部抵抗値の任意レンジのメータを作る参考になるかと思います。

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