半波長 端給電アンテナの検討       最新改定 2017.Sept.8 JH3FJA

 移動運用での40mバンド用のアンテナとしてダイポールより給電位置が低く設置が楽そうな 半波長エンドフェッドアンテナの特性を検討したものです。 電圧給電になりますので送信機の50オーム出力系を直接には繋げないので整合についても含めています。

   <目次>
1. 条件設定
2. 接地型での結果
3. 地線付きスタイルでの結果
4. 4分の1波長ホイップ系と比べてみる

1.条件設定

 給電側端部を地面に直接接地した接地型から始め、次に地線を持ったスタイルのもの(直接接地はしない)を検討しています。 アンテナ布線スタイル(線材の張り方)は下図の5つ、 「バーチカル」は真垂直の一直線、 「逆L型」は垂直部と水平部からなる逆L字形、「山型」はインバーテッドVのように長さ中央を持ち上げた形、「傾斜山型」は山型を少し寝かした形、「スローパ」は一直性に傾斜させた形、「逆U」は門型のベントダイポールを端から給電するスタイルです。
 なお、アンテナエレメントの線材は 地線を含めすべて Φ2mm銅線です。

バーチカル逆L型山型傾斜山型スローパ逆U

 大地の電気特性は 次の2種、適度な特性の一般的な地面 と 湿気た地面です。 両者は誘電率で8倍程違いますので顕著に違いが見えるだろうとの思いからです。
項目適度な
(moderate)
湿気た
(highly moist)
備考
導電率0.003 MOHS/m0.005 MOHS/m-
誘電率430-

 50オーム給電のための整合回路は 大きなインピーダンスに変換出来れば何でもよい訳ですが L型整合回路のローパス型 で計算してあります。 この回路の詳細が必要な場合は この資料(5.9MB) を参照してください。


2.接地型での結果

(1)インピーダンス特性と指向特性

 給電側端部を地面に直接接地したものの結果です。 給電点で見たアンテナインピーダンスと その下括弧内の2つの数字が 50オーム整合のための直列インダクタンス値、後者が同じくアンテナと並列に入るキャパシタンス値です。

 「湿気た大地」欄のインピーダンスは 「適度な大地」でチューニングしたアンテナ長さそのままで湿気た大地に設置した時の当該値です(「湿気た大地」で再チューニングはしない)。 当然共振周波数(固有値)はシフトしますのでその量を整合値の右にKHz単位で書いています。

形態適度な大地湿気た大地天端高さ
バーチカル3326-j127
(9.14uH/54.6PF)
2742+j262
(8.32uH/60.9PF),+50
20m高
逆L型4345+j127
(10.5uH/48.3PF)
4197+j531
(10.4uH/49.3PF),+50
10m高
4638-j32.5
(10.8uH/46.6PF)
4914+j653
(11.2uH/45.5PF),+50
7m高
山型7453+j715
(13.8uH/37PF)
9255+j2398
(15.8uH/32.6PF),+50
10m高
4597-j193
(10.8uH/46.6PF)
5233+j1249
(11.8uH/43.7PF),+50
7m高
傾斜山形10K-j1721
(17.1uH/29.4PF)
20K-j2894
(19.9uH/25.2PF),+50
10m高
5290-j432
(11.6uH/43.2PF)
6464+j941
(12.9uH/39.6PF),+50
7m高
スローパ3923-j71.4
(9.94uH/50.5PF)
3733+j789
(9.9uH/52PF),+50
10m高
4186+j116
(10.3uH/49.2PF)
3910+1542j
(10.7uH/49.2PF),+100
7m高
3619-j187
(9.55uH/52.3PF)
3237+314j
(9.06uH/56.1PF),+50
14m高
逆U30K-j1116
(27.9uH/18.2PF)
4197+j531
(10.4uH/49.3PF),+50
10m高
6546-j125
(12.9uH/39.2PF)
4914+j653
(11.2uH/45.5PF),+50
7m高


(2)インピーダンス特性と指向特性

 適度な地面条件での 周波数対インピーダンス特性、ゲイン指向特性を以下に示します。 アンテナの形状寸法は付記した説明を参照ください。

<バーチカル>

 全長(全高)は21.26mです(現実の樹木への投索となると結構技量が要る高さ)。 長さの調整だけではリアクタンス分をゼロにすることができず目的周波数での共振には位相で見てあと25deg分ほどの誘導性リアクタンスが要るので、整合回路にこの分も負担させ共振状態にします。
 垂直面指向性の図において重ね書きの赤線は 半波長垂直ダイポールの特性 で 地面側エレメント端部を地上0.1m高さにセットしたものです。 1dB強のゲイン差があります。



<逆L型>

 垂直部 10m、水平部 10.54m、合計 20.54mです。 電流振幅の腹がLの角部分に位置します。低輻射角もある程度期待ができます。
 垂直部 7m、水平部 13.45m、合計 20.45mです。 垂直部が短くなると極端に低輻射角の成分が薄れてしまいます。
 ゲインは落ちますが 全長が半波長の8割程度でも共振に持ち込めます。 上のものから水平部を短くした 垂直部 7m、水平部 9.53m、合計 16.53m(短縮率で77.8%)の特性です。 指向性パタンは上と似たようなものですが(電流給電になるため地線1本の影響で)少し変形します。



<山型>

 天端高さ10m、給電端高さ0.2m、開放端高さ1m、下端離隔距離9.2m、全長21.14m。 垂直面指向性の図において重ね書きの赤線は インバーデッドV (山型半波長ダイポール) の特性で 両端部を地上0.5m高さにセットしたものです。 1.5dB強のゲイン差があります。

 天端高さ7m、給電端高さ0.2m、開放端高さ1m、下端離隔距離15.2m、全長20.1m



<傾斜山型>

 天端高さ10m、給電端高さ0.2m、開放端高さ1m、下端離隔距離6.8m、天端寝かしズレ4m、全長21.7m

 天端高さ7m、給電端高さ0.2m、開放端高さ1m、下端離隔距離13.5m、天端寝かしズレ4m、全長20.43m



<スローパ>

 給電端高さ2m、天端高さ(=開放端高さ)10m、全長20m

 給電端高さ2m、天端高さ(=開放端高さ)7m、全長20m

 給電端高さ2m、天端高さ(=開放端高さ)14m、全長20m



<逆U>

 天端高さ10m、水平部長さ1.8m、開放端高さ0.5m、全長21.3m

 天端高さ7m、水平部長さ7.3m、開放端高さ0.5m、全長20.8m



3.地線付きスタイルでの結果

 直接的な地面への接地を行わず 地線付きスタイルでの検討として 地線長さ と 地線高さ(地面との離隔距離)の違いがもたらす影響を 同調特性、アンテナインピーダンス、指向特性から眺めています。
 地線長さは 1m/3m/5m/10m を比較しています。 5mは 8分の1波長、10mは 4分の1波長にあたります。 また、地線高さ(地面からの離隔距離)は 5cm/1m/2m の3種としています。
 バーチカル(半波長端給電垂直アンテナ)を対象とした結果を以下に示します。 大地の電気特性は「適度な(moderate)」です。

(1) 共振特性・アンテナインピーダンス

 地線長1mはアンテナ自身で共振(リアクタンス分ゼロ)状態にもって行けません。 地線長3mあると共振状態にもって行けますがそれでも共振を維持できる周波数範囲は狭いです。  地線長5mになると共振を維持できる周波数範囲も広く良好です。 更に地線長10mになると直接地面に接地するのに匹敵しています。

地線長さd = 0d = 0.1md = 1md = 2m備考
地線なし
直接接地
3326-j127
(9.14uH/54.6PF)
1m-2488-j1198
(8.77uH/53.6PF)
1871-j1510
(8.8uH/51.1PF)
1725-j1409
(8.49uH/52.6PF)
3m2495-j9.45
(7.89uH/63.2PF)
2294-j29
(7.56uH/65.8PF)
2439-j62.2
(7.8uH/63.7PF)
5m2639+j25
(8.12uH/61.6PF)
2823-j111
(8.41uH/59.2PF)
2858+j102
(8.46uH/59.4PF)
8分の1波長相当
10m2945+j144
(8.6uH/58.6PF)
3123+j167
(8.86uH/57PF)
3323+j187
(9.15uH/55.3PF)
4分の1波長相当


<地線の長さ Lcp=1m>
 
地線の対地離隔 d=5cm地線の対地離隔 d=1m地線の対地離隔 d=2m


<地線の長さ Lcp=3m>
 
地線の対地離隔 d=5cm地線の対地離隔 d=1m地線の対地離隔 d=2m


<地線の長さ Lcp=5m>
 
地線の対地離隔 d=5cm地線の対地離隔 d=1m地線の対地離隔 d=2m


<地線の長さ Lcp=10m>
 
地線の対地離隔 d=5cm地線の対地離隔 d=1m地線の対地離隔 d=2m


(2)ゲイン指向特性

 以下に示します。 地線長さ 1m(青)/3m(赤)/5m(緑)/10m(桃) を重ね書きしたものを 地線高さ3種分 横並べ配置してあります。 地線長さの差、地線高さの差による影響は僅かです。

地線の対地離隔 d=5cm地線の対地離隔 d=1m地線の対地離隔 d=2m



4. 4分の1波長ホイップ系と比べてみる

 エレメント長さの違い、天端位置違い、などありますが ゲイン指向特性に着目して眺めてみるとこんな感じです。

地線を含む全長の半分の位置が給電点になるのは地線長が10mの時だけで 他のケースでは半分の位置より地面寄りのズレた位置から給電していることになります。

(1) 地線の高さ d=5cm

<地線の長さ Lcp=3m>

半波長端給電アンテナ(青線プロット): 天端高さ20.1m、垂直エレメント長20.05m
1/4波長ホイップ系(赤線プロット)  : 天端高さ16.65m、垂直エレメント長16.6m
垂直面指向性水平面指向性

<地線の長さ Lcp=5m>

半波長端給電アンテナ(青線プロット): 天端高さ20.3m、垂直エレメント長20.25m
1/4波長ホイップ系(赤線プロット)  : 天端高さ14.25m、垂直エレメント長14.2m
垂直面指向性水平面指向性

<地線の長さ Lcp=10m>

半波長端給電アンテナ(青線プロット): 天端高さ20.3m、垂直エレメント長20.25
1/4波長ホイップ系(赤線プロット)  : 天端高さ9.3m、垂直エレメント長9.25m
   
垂直面指向性水平面指向性


左上・・・半波長端給電アンテナ
左下・・・1/4波長系アンテナ

地線の高さ d=1m

<地線の長さ Lcp=3m>

半波長端給電アンテナ(青線プロット) : 天端高さ21.15m、垂直エレメント長20.15m
1/4波長ホイップ系(赤線プロット) : 天端高さ19.1m、垂直エレメント長18.1m
垂直面指向性水平面指向性

<地線の長さ Lcp=5m>

半波長端給電アンテナ(青線プロット): 天端高さ21.45m、垂直エレメント長20.45m
1/4波長ホイップ系(赤線プロット)  : 天端高さ16.85m、垂直エレメント長15.85m
垂直面指向性水平面指向性

<地線の長さ Lcp=10m>

半波長端給電アンテナ(青線プロット): 天端高さ21.15m、垂直エレメント長20.15
1/4波長ホイップ系(赤線プロット)  : 天端高さ11.9m、垂直エレメント長10.9m
垂直面指向性水平面指向性


関連参考:

 サガ電子 ツエップ型ワイヤアンテナ 取説

END

改定来歴:  2017.Sept.9 4. 4分の1波長ホイップ系と比べてみる を追加