最新改定 2004-Dec-31
M35代替カーボンエレメントを作る
 カーボンマイクエレメントは軍用無線機遊びにおける「難儀な物」のひとつです。PRC-10(A)とのデザイン的なマッチングを優先するとハンドセットはやはりH33を使うのが最良ですが、内装のカーボンエレメントM35の真に健全な物にはもはや出会えません。 それならM35コンパチのマイクモジュールを作ろうと言うのがこのプロジェクトです。
記事は時系列で降順に記述してありますので後ろ(お尻)から読んでください。 (JH3FJA)
まとめ(工事中) 代替3号の特性(工事中) 代替3号の構造 代替1号の特性
回り止めアイデア1 可能性を確認する 攻略する敵を知る 起点の発想

C代替3号の構造
 突然3号にワープします。 2号ではJA3ANF局の技巧的な薄板鉄板細工でM-35エレメントの外形シルエットまでもを酷似されましたが、数日後、更にシンプルで完成度の高い本構造が同局により案出されました。
両者表面
 左がM-35/Uエレメント1988年8月AUDIOSEARS生まれの表側、縦に切られたスリットがその奥の空気室と相まってアコースティックリアクタ(音響的制動機構)を形成します(スリットの代わりに小さな穴であったりもします)。
 右が代替3号、2004年10月宝塚(JA3ANF局宅)生まれです。白く見える外周リング(FRPパイプ)のほぼ内径に小型スピーカが嵌め込まれています。
両者裏面
 左がM-35/Uエレメントの裏側、右が代替3号の裏側、2.54mmピッチ丸ランドのユニバーサル基板を「ベースプレート」に、表面(写真で向こう)には「外周リング」と「小型スピーカ」を接着、裏面には銅板による「接触子」と「回路基板」をそれぞれ接着および両面テープ止め(白く見えてる)で出来ています。
 「ベースプレート」は穴明きユニバーサル基板なので、スピーカコーンの背後側を閉塞しません。
 「接触子」は縦リブがハンドセットの送話部のモールドの窪みに入り込みフィットする形状になっており、載せ方を180度違える事により極性切り換えをします。この構造はハンドセット送話器部での若干の配線の矯正が必要ですが、送話部キャップを捻っても内部で代替カーボンマイクが回転方向にズレることがなく非常に良好な回り止めでもあります。
代替3号横顔
 代替3号の横顔です。写真上方から順に「外周リング(FRPパイプ)」、「ベースプレート(ユニバーサル基板)」、「接触子(銅板)」です。

C代替1号の特性計測
 構造面はさておき、音響的な特性を把握すべくJH3FJAが製作途中のカーボンマイクテスターをバラックのまま使用しJA1ENC局作「C代替1号」の特性計測を行いました。
代替1号の特性  左のグラフは相対感度ですが計測結果の周波数特性です。 低い周波数側がストンと落ちもう少し低域側が欲しいところです。一方、高い周波数側は延び過ぎの感があり数100Hz分ほど低域側にシフトしたい感じです。
 ゲイン特性については「ばたつき」が非常に少なくフラットで良好と言え、不如意な共振特性を持たないので、アコースティックリアクタ(音響的制動機構)を必要としません。 実際に無線機に繋ぎ肉声での受信音を録音し味わってみると、そう極端に低域が抜けた感じでもなく良い感じです。が、フラットな周波数特性のためか、やはりカーボンマイクの音では無いです。Hi
 次に感度ですが、「JH3FJAの保有するM35エレメントの一番良好なものに比べC代替1号は、+0.7dB良いです。(非工学的で申し訳けありません)
また、JH3FJAの保有のいかにも健全そうなH90ハンドセット送話器に比べ、C代替1号は、0.9dB劣ります(周波数特性が異なりメリハリがあるので耳ではもっと感度が高いように聞こえます)。
 以上は、エレメントへの印加電圧1.37V、試験入力音圧76dB(A)/波形正弦波の条件で計測・比較したものです。

回り止めアイデア1
回り止めアイデア1  回り止めアイデア1は、基板外周にキー溝の如くの窪みを付け、一方、ハンドセット側には窪みと対峙する突起を設け嵌め合うものです。 左の写真において基板外周の溝は赤いシールでのマーキング部とその対向方向の2ケ所にあり、また、ハンドセット側の1ケ所の突起は木片を接着剤で止め作ってあります。 この勘合により使用機種に合わせ180度セット方向を変えることでプラス/マイナス極用に切り替えるわけです。
 この方法は円形基板の外形寸法を送話部モールド穴内径によほどタイトするか、窪み深さを深くとり突起を高くしないと、確実ではありません。 ところが突起を高くすると、やがて本家M35カーボンエレメントが入らなくなり、良い構造では無いことが分かりました。

可能性を確認する
試作1号 試作1号  「C代替試作1号」を造りました。梶さんお考えの通り、円盤お尻に回路を外に付け足したものです。 目的は、ユニット単体で「C代替」可能性の確認です。

@ユニットを180°回転で、プラス極用及びマイナス極用に切り替えOK。
A変調音をモニターし、プラス極使用ではPRC-10およびRT-70,マイナス極使用ではPRC-10A、FSE-38/58およびFSE-35で、ちゃんと変調がかかることも確認しました。(ちゃんと変調がかかる=健全なM-35/Uエレメントの変調レベルと比べ そこそこの変調レベルが得られる)

この試作ユニットの、現在の問題点は周り止めです。 お尻のユニットに、ミニチュアリレーのケース様のカバーが出来れば、マイク室の窪みで、周り止め出来そうなんですが、手頃の物の手持ちがありません。
音質を含め、もう少し試験してみます。 後日、寺西さんにお届けしますので、お考えの「C代替」テストアダプターで試験お願いします。
画像中の鞍馬の取手状のものは、廻り止めのつもりでしたが、幅が狭くこれはNGでした。
(2004-Sep-10 JA1ENC)

攻略する敵を知る
 JA3ANF局が手持ちの古いM35/Uを分解、またJA1ENC局が日本製のNEC製のJM35/Uを観察、ポイントの一つが鼻息や風などの流速動圧を直接感じてしまわない様に設けてあるアコースティックリアクタ(音響的制動機構)ではないかなー?、と言う事がわかりました。(JH3FJA)

<M-35/Uの分解>
M35/Uの分解
 親の仇の構造写真です。上の段左から右の順序です、次に下の段を左から右の順序です。 下の段左から二枚目と三枚目の間にマイラー質の防湿フイルムがあった筈ですが40年の年月に行方不明になりました。 防湿らしき痕跡はありません、これが朝鮮動乱の時代のシユアーのマイクです。 部品の多さに驚きますが全ての部品は此れでもかコレデモカとプレス加工されたパーツの組み合わせです。 ダイアフラムは意外と硬い燐青銅の感じです、スリットの拡大はカーボン入れ替えに先立つ不適当な加工でお恥ずかしい次第です。(2004-Sep-10 JA3ANF)

<JM-35/Uの観察>
JM35の表側(口元側)JM35の裏側 1965年(昭和40年)NEC製造の国産エレメントです。 本家M-35/Uとの外観的な違いは、アコースチックリアクターの成状で、本家M-35/Uはスリット、日本製JM-35/Uは2つの穴(Mの上と/の上に位置)になっています。 裏側の6角頭のネジは、これを外すとカーボン粉の入れ換えができます。(2004-Sep-10 JA1ENC)


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