● SEM-35について              (最新改定 2005-May-07)

  2004年秋、JA1ENC局より 「SEM-35はPRC-77より良いですよ、29メガにも出られますし」 とのご推奨で触手が動き早速入手、内部を開け虜になった機械です。 WWU以降の米国デザイン踏襲の流れの中でドイツにてオリジナル設計されたものの1つだそうで、ドイツ職人の気迫がにじみ出ております。
  SEM-35のお遊び上の最大の特長は、6mと10mの2つのアマチュアバンドを1台でカバーすることで、相互のクイックQSYにもってこいです。 例えばMRCが提唱促進の51.2MHz(@関西)から29.2MHzへのQSYはバンド切換えスイッチをロー側パチンと捻り(28.2になる)、1MHz代の周波数ツマミを1ノッチ分右にカチャンと廻すだけでOKです。 これが特筆に値するかは実際に使われてみるとお分かり戴けます。

■ 概観
SEM-35操作パネル面
  同種のマンパックラジオに比べ縦横比の小さな操作面には、ドイツ語表記であっても機能の推測がつくほどのツマミ類の配置がとられ、予備的な学習もなく操作運用することがでます。

■ 仕様・構成

  非常に良くまとまった記事がWeb上にありましたので下記を参照ください。
The VMARS Newsletter THE SEM-35 MANPACK by Murray McCabe

■ 電源部
DC/DCコンバータ部+電池箱 電池箱
  マンパックタイプのトランシーバにおける構造ではお馴染みの、底部の電池箱ですが、SEM-35においては電池箱とDC/DCコンバータがこの部分に収納され本体から分離ができます。左の写真の一番右手がDC/DCコンバータ部で電池動作・外部電源動作ともにこのDC/DCコンバータを経て必要な電圧が本体内部に供給されます。
  右の写真は電池箱を開けたところで、単1乾電池(UM1)を12本内装し、内部で直列接続されます。
  左側の写真の大判
  右側の写真の大判

■ 減電源電圧特性

  評判の高いSEM-35の減電圧特性をラフに計測した結果です。 24V外部電源モードで、24Vからジワジワ低減させた時の挙動を計測しました。 この結果から車載にあっては12V車、24V車を問わず気にせず稼動が可能です。 なお、1台しか持っておりませんので固体差は不明です。

<送信モード>
  LOW(150mW)では、外部電源電圧15VあたりでDC/DCコンバータのヒュ−ンという音がH33ハンドセットの受話器においてサイドトーンとして聞こえ始めますが8V程度まではBNCアンテナ出力の変化はありません。ローカル局のレポートでは8Vでも変調音の変化は感じないそうです。
  HI(1W)では、16.5VあたりでDC/DCコンバータのヒュ−ンという音がサイドトーンとして聞こえ始めますが10.8VまでBNCアンテナ出力の変化はありません。 8VでもRF出力は落ちますが運用はできます。

<受信モード>
  8Vまで通常感度を維持しています。 DC/DCコンバータのヒュ−ン音はH33受話部では気付かない程度です。 12cmのHiFiスピーカボックスで聞くと認識ができますが極く僅かで無視できる程度です。


■ 周波数出力抵抗値
これが周波数ダイアルに連動して動くポテンショ抵抗回路です

  操作パネル正面から見て本体右側面にある22番コネクタには色々な楽しめる入出力信号が出ていますが、その一つがプリセット方式のアンテナチューナに渡す周波数設定に対応した抵抗値出力です。 これを勝手に「周波数出力抵抗値」と呼びます。 左図はSEM-35の全体回路図からその関連部分だけを抜き書きしたもので、R3が周波数設定ダイアルにメカ的に連動したポテンショメータ、また2つのSPDT接点はバンド切換え軸に繋がったスイッチです。

  この回路の外部から見た抵抗値の変化を実測すると下のグラフの様になります。 ポテンショに並列の固定抵抗が居ますので抵抗値は凸型のカーブになっていますが、全体の分割比で眺めると周波数との関係が一意な特性になります。 これらとアンテナ側に内蔵の交流サーボ回路で周波数に対応した整合インダクタンスとキャパシタンスがセットされます。

周波数対抵抗値変化の様子です

<アンテナチューナとのインタフェース> アンテナチューナとのインタフェースです

  左図はサーボ系を成す2つのポテンショ廻りを表現した回路図です。 右側がSEM-35本体、左側がアンテナチューナです。アンテナチューナ側の400Hzの発振・電力増幅回路で作られた400Hzの交流電圧をブリッジの電源として、SEM-35の周波数設定に応じたポテンショメータのセンター位置の変化に追随するようにアンテナチューナ側のモータが廻りやがてブリッジが平衡し目的にプリセット位置に整合回路のインダクタおよびキャパシタが落ち付きます。 高周波的な整合を検出する方式ではなくプリセット方式のチューナです。
アンテナ内部のサーボ回路はこんな構成 のものです。


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