● URC-68について              (最新改定 2005-Apr-17, JH3FJA )

  URC-68はヘリコプター搭乗員が装備したレスキューラジオだそうで、空対空、地対空をUHFのAM波、VHFのFM波でカバーしたようで、ガードチャンネル(243.000MHz AM 緊急周波数)以外にU,V各3chを3ケの水晶の実装で可動出来ます。レスキューラジオとしては珍しくローバンドVHFが含まれ(*1,*2)、恐らく常時は物資補給等の非レスキュー用途をカバーしていたと思われます。 トーンスケルチを持っておりPRC-25、77等とも交信されたと想像すると楽しい機械です。 SWEPTモードでのビーコンは、UHF/VHFの交互連続発信となり不如意な243Mcの発振となりますので厳重注意が必要です。(243.000MHzは2009年まで現役の緊急周波数です)
    *1  Survival Equipment,Brooke Clarke N6GCE,Frequency & Function Table
    *2  U.S. Military Portable Radios/By Alan D.Tasker,WA1NYR/SAR/Rescue Radios

 概観
PRC-68操作パネル面
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  形状は非常にコンパクトで、専用電池を含む包絡外形は、160×95×45mmです。天方向の面になる魅力的な操作パネル面には、選択スイッチ3つ、調節ツマミ1つ、トグルスイッチ1つ、ロッドアンテナ、外部出力コネクタ、イヤフォンジャックが旨く配置されています。
  また操作パネルの正面側面には小さな矩形スピーカが、ボディー正面の左下端にはマイクロフォンが配置されています。 スピーカとマイクロフォンの位置を隔てることで音声交話においてハウリングなくサイドトーン機能を実現しています。
PRC-68操作パネル面
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  3つの選択スイッチは、「MODE」、「BAND」、「CHAN(NEL)」です。
  「MODE」は、BCN(
こんなビーコン音の発信)、PTT(音声による交話)、MCW(可聴トーンの発信)の3つのポジションを持ちます。 MCWでは右側面にあるPTTスイッチを電鍵代わりとしモールス信号を発信します。当局らの世代ではA2、F2と説明するのが最適です。
  「BAND」は、SW(UHF、VHF交互のビーコン音発信)、UHF(230〜250Mcバンド)、FM(38〜42Mcバンド)の3つのポジションを持ちます。この機械においてはVHFバンドは物(ブツ)ドキュメント共に「FM」と表記されます。 SWポジションはMODEがBCN位置でかつCHANをG(ガード)位置に置かない限り選択できないよう3つのツマミの外形を干渉させ機械的なインタロックによりガードチャンネルのみでSWEPT動作が許容されます。
  「CHAN」は4つのポジションを持ち、チャンネルを選択します。G(ガードチャンネル)、A(Aチャンネル)、B(Bチャンネル)、C(Cチャンネル)で、これらがUHF、VHFに対し効きます。
  「VOL」と表記されたツマミは音量でスイッチ付きで電源スイッチになります。
操作面の右下にはイヤフォーンジャックがありゴムシート付のスプリングキャップが被り防水されています。
  「SQ」と表記のゴムシールの被ったトグルスイッチはスケルチのON・OFFです。この機械はノイズスケルチとトーンスケルチ機能を持っています。
左下はロッドアンテナの収納キャップで、ネジ式の袋キャップになっています。 収納状態のアンテナは送信回路からスイッチで切り離されます。 左上の外部アンテナ出力コネクタは常時回路的に繋がってはいますが残念ながら50オームではありません。
  なお、この機械を楽しむ上での難点は、専用電池が外形形状・外観デザイン上の一部を成しており、専用電池がもはや入手ができない今、真の外観の再現ができない点です。

 構成
オーバオールブロック図


<受信系>
  RECEIVER CONVERTERは局発回路とその逓倍回路を持ちVHFにあってはFM RCVR INPUTを局発基本周波数でヘテロダインして10MHzIF信号に変換(シングルスーパー)、UHFにあってはUHF RCVR INPUT局発基本周波数の×4逓倍の信号と局発基本周波数で2回ヘテロダインして10McIF信号に変換(ダブルスーパー)します。FM 50MHz INJECTIONとある信号は基本局発信号(水晶発振周波数)をバッファした出力です。
  10MHz BANDPASS FILTERは、中心周波数が10.125MHzのクリスタルフィルタで、このような特性のものです。
  IF-AF AMPLIFIERは、IF増幅、AM復調、FM復調、スケルチ、AF増幅回路からなりスピーカを駆動します。

<送信系>
  MODULATORではマイク入力の音声処理、ビーコン・トーン信号の発生、FM変調信号への加工等を行います。
  UHF TRANSMITTERではMODULATORからのオーディオ信号で40MHz信号(VHFそのもの)をAM変調し更に200MHzと混合のうえ電力増幅し出力します。
  FM TRANSMITTERではMODULATORで得た10McFM変調信号と50Mc台局発信号で40Mc台に変換し電力増幅します。

  上述のモジュール間接続を含む機内のオーバオール接続図を掲げますので楽しんでください。アンテナ下のS6はロッドアンテナの一番底部を本体から引き出すことでONになる接点です。非常周波数での動作チェックの際に極く最小の電波輻射になるよう配慮がしてあります。
  なお、両バンド周波数と水晶の詳しい周波数関係は後に説明します。

 構造

  主基板の上に下記に示す6種類のモジュールと局発水晶をプラグインする極シンプルな構造です。 左下隅の四角いものは
ダイナミックマイクロフォンエレメント、その上のOD色のものは、ロッドアンテナを絶縁するスリーブです。
URC-68内部モジュールの様子
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種類番号  備考 
Filter BandpassSM-C-660255, 37695/328387  
Receiver-Converter SM-D-660161, 37695/716744-801   
 Radio Transmitter-UHF SM-D-660167, 37695/716775-801  
Radio Transmitter FMSM-D-660165, 37695/716777-801  
Radio Unit ModulatorSM-D-660169, 37695/716776-801  
IF-AF AmplifierSM-D-660163, 37695/716778-801  


 V/UHF周波数対水晶の周波数関係
RFIFブロック図


  URC-68は、VHFバンドに対しては第1中間周波数が10.125Mcのシングルスーパー構成で、局発はアッパー側です。 上のブロック図において局発、右のバッファ、第2ミキサ、IF出力の流れです。よって
        局発水晶周波数=目的周波数+10.125Mc
目的周波数(レンジ)として38〜42Mcなので48〜52Mcの水晶が実装されます。
  UHFバンドに対しては第1中間周波数がVHF周波数、第2中間周波数が10.125Mcのダブルスーパー構成で、第1局発は水晶周波数×4逓倍、ロワー側となります。 第2局発は局発水晶周波数でアッパー側です。上のブロック図において局発から×2×2逓倍を経て第1ミキサへ、更に第2ミキサを得て10.125McIFとなります。これらより
        局発水晶周波数=目的周波数÷5+10.125Mc
となります。
  なお、VHFバンドにおいては第1ミキサへのローカル信号は、BANDスイッチの接点により2つの2逓倍回路への電源が断たれOFF(ローカル信号なし)となり、アンテナからのVHF受信信号が第1ミキサを単純に通過します。 このためVHFバンドにおいては周波数変換を担うミキサは第2ミキサだけになりシングルスーパーを構成します。
  局発水晶はVHF,UHF共通ですから、結果的には以下の運用周波数となります。
    VHFバンドでは ---> 局発水晶周波数−10.125Mc
    UHFバンドでは ---> 局発水晶周波数×5−10.125Mc
例えば、50.625Mcの局発水晶を実装すると
    VHFバンドでは ---> 40.5Mc
    UHFバンドでは --->  243Mc
となります。
  5台中4台のURC-68には次の水晶が実装されていました。
  
 Channel Xtal VHFUHF remarks
 G  50.625   40.5  243   guardchannel 
49.025 38.9235  
50.225 40.1241  
なし  


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